会社員として事業会社に就職したものの当初より独立志向の強い方、人生100年時代を迎え会社を退職して一旗揚げようと考えている方、昨今の多様な働き方を認める風潮もあり、副業・兼業を始めようと考えている方、いろいろな方がいらっしゃると思います。起業のアイデアをお持ちで、起業しようと考えているが、何をすればわからないということもあるでしょう。
【事業計画、資金繰り計画】
ビジネスのアイデアを具体化していくには、まず文書にしてみましょう。
- 自分の創業動機、ビジョン、決意
- 他社と比べて、自信をもって提供できるサービスは何か?その理由は何か?
- 得意とする顧客層はどこか?その機会(チャンス)はあるか?
- 弱みは何か?それは克服可能なものか?もしくは回避可能なものなのか?
- 開業にかかる当初支出(設備の購入代金や店舗の敷金等)は何が必要か?
- 運転資金(売上と費用の決済差額)は必要になるのか?
これらを考慮して、簡単でもいいので事業計画や収支計画を立てましょう。売上は例えば飲食店であれば、まずは、(客単価)×(席数)×(回転数)×(一か月の営業日数)=(一ヵ月の売上予測)で十分です。今後の資金繰りにも影響しますので、楽観的な予測にならないように、気をつけましょう。
事業計画や資金繰り計画を作成する上で不明な点があれば、経営革新等認定支援機関(中小企業・小規模事業者が安心して経営相談等が受けられるために、国が認定する支援機関)に相談をするとよいでしょう。
【個人事業主にも会社設立にもメリットとデメリットがあります】
個人事業主は税務署に開業届を出すだけではじめられますので何といっても手軽です。また、売上が少額で、赤字であれば実質的に納税負担も発生しません。一方で、利益が多額となる場合には、累進課税(利益の額が大きいほど税率が高くなる)のため、会社設立の場合と比べ税金が高くなります。また、株式会社と比較してどうしても信用力が低いので、人事採用等の面では不利になる可能性があります。
会社設立の場合は、「信用力」が増すことが挙げられ、いわゆる日本の大手企業はすべて株式会社となっています。金融機関から借入や取引先との取引条件等も、個人事業主より有利な条件となることがありますし、企業規模も拡大しやすいでしょう。また、法人税率は最大でも約30%ですので、利益が大きい場合には、個人事業主として比べて納税額が少なくなります。半面、赤字の場合であっても、納税が必要ですし、株式会社を設立する場合には、設立時に20万円程度の費用がかかります。また、社会保険の加入義務や事務負担が増加することも覚えておく必要があるでしょう。
個人事業主として起業し、会社規模が大きくなれば、株式会社を設立して、さらなる事業規模の拡大をするという選択肢をとっている経営者の方も多くいます。なお、税理士に委託をすることで、創業時の提出書類や会社設立の支援が可能です。
【税理士について】
個人事業主であっても、株式会社であっても、税務申告は必要です。必ずしも税理士による申告が必要ではなく、個人による申告も可能です。この場合、分からないところは税務署等の無料相談や各種無料相談会に問い合わせを行うことが可能です。
売上高が1千万円を超えると消費税の申告が必要になりますので、申告が少し複雑になります。消費税の場合だと、売上5千万円までは簡易課税での申告も可能ですので、不利な申告とならないように税理士に委託をするのも良いでしょう。
また、税理士に税務業務を依頼することで、貴重な時間を本業に集中することができます。会社の内情を数値で一番理解しているのは、経営者を除けば顧問税理士というケースも多いと思います。税務申告で得られた会社の状況と、種々の事業、会社を通して得られた経験を比較し、経営上有用なアドバイスが得られることも税理士に税務業務を委託するメリットでしょう。
※2023年10月から消費税法の改正によりインボイス方式という制度が導入され、売上が1千万円未満の会社でも営業施策の観点から現在免除されている消費税を納付した方がよい場合もあります。